My Story, My Sony.

Sony Park展で歴代の名機に触れる

ソニーの歴史を飾ってきた数々の名機が現物で展示されるということで「Sony Park展 Kyoto」に行ってきました。(このタイミングで行くべきはInterBEEじゃないんかい!という、映像関係同業の皆様からのツッコミは謹んで受けます。)

イベントは京都新聞社の印刷工場跡と、平安神宮隣のロームシアター京都(京都会館)で開催されているのですが、訪れたのは後者 第二会場の”My Story, My Sony” 特別展示。

久しぶりに歩いた会場近くの岡崎公園エリアですが、晴れた秋の昼下がりということもあって、京都らしい気持ちのいい空気が流れていました。観光も回復してきたとは聞きますが、かつてのハイシーズンの風景を思い出すと、まだまだ人出は少ないと感じます。

会場はロームシアター京都の地下。ソニーの歴史を作ってきた数々の名機たちが、大部屋にずらり、壮観です。記事タイトルに「触れて」と書きましたが、手で触れることはできません。ただし写真・動画は自由とのこと。

創業者・井深 大氏による直筆の設立趣意書から始まり、『SONI』ブランドのテープ、日本初のトランジスタラジオ・TR-55、トリニトロンテレビ、ドデカホーン(CDラジカセ)、マビカ(デジカメ)、プレステ、aibo(プロトタイプの姿も!)など…なかなか目にできない貴重な傑作から、馴染みのある懐かしの製品まで。

放送業界に身を置いていたものとしては、やはりソニーの業務機も気になるところなのですが、今回のイベントはどちらかといえばコンシューマーが中心。それでも、特に創業期の製品などを見ていると、一般・業務のボーダーはそれほど無く、とにかく新しくて楽しいモノづくりに挑戦しつづけたソニーの勢いを感じます。

デジタルビデオカメラ(MiniDV) DCR-VX1000

こちらは1995年登場の、世界初の家庭用デジタルビデオカメラVX1000。アナログ記録だった家庭用ムービーカメラがデジタル記録になり、一気に高画質化を成し遂げた、まさにエポックメイキングな製品です。同時にライバルの松下電器からも同規格のカメラが発売されましたが、より存在感があったのはVX1000と記憶してます。互換性のある業務規格「DVCAM」に対応した兄弟機・PD150の展示はありませんでしたが、そちらは放送業界で長らく「デジ」と呼ばれました。

専業のカメラマンではないディレクターが自ら操れる取材カメラとなったこの製品の登場は、テレビ番組の作り方を変えたと言って過言ではありません。iLINK(FireWire)ケーブル一本でPCに接続しファイルにデジタイズできるというのも革命的で、もしこの規格が無かったならば、今ほどノンリニア編集が身近な「動画時代」は来なかったのではないでしょうか。

※デジが大活躍した番組で今も印象強いのは「水曜どうでしょう」「電波少年」あたりでしょうか。取り回しの良さ・使い捨てできるほど安価なテープ・家庭用ベースながらも放送に耐えうる高画質ということで、良くも悪くも番組現場にはデジ素材が氾濫。それを当時我々若手は編集用のベータカムへ延々と「立ち上げコピー」する作業に奔走したのでした…

HDDレコーダー CoCoon

CoCoonは、AV機器に詳しい人でもなければ馴染みのない製品かもしれません。2000年代初頭のハードディスクレコーダーで「全録」のはしりです。

実はこの機材、かつて関わっていた大阪の放送局の報道では陰ながら重要な役割を担っていました。報道局内には各支局や中継車、そしてお天気カメラから伝送される映像を受信・収録する一室があるのですが、このCoCoonはその長時間録画性能を活かし、常時映像の伝送がされていたお天気カメラの映像を収録し続けていたのです。これは地震や事故が発生した際、その瞬間が記録された映像としてニュース素材になるのです。利用頻度が高いわけではありませんが、これが動いていたからこそ届けられた映像もあったのです。

実験的ともいえるこの家庭用の製品が、報道の現場で(部屋の片隅で)活用されていたのはソニーの方も知らないかもしれません…

リニア編集時代、編集データ(EDL)はフロッピーディスク、テロップデータはMOに保存していました。

私自身も、一時期ソニーグループの技術会社に勤めていました。少し迷走していたような時期でもあり、自分としては正直それほど魅力を感じていなかったような所もあるのですが。今思えば、端くれであってもソニーの名前を掲げて仕事をさせてもらえたことは誇りに思います。

通過点のように見える仕事も、色々な所へ影響しながら後の時代を作っていく。歴代の名機と、それによって支えられた映像産業を垣間見ることができ、今ここで仕事をしている自分自身の振り返りもできたように感じます。

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